焼き物でも、稲荷神社でもない。
春の茨城・笠間へ。
まずは、日本初のイコン画家 山下りんを訪ねて。
イコン画家は、イコン画にサインすることを許されない。
でも、彼女は自分のためのイコンを1枚だけ描き、サインをいれた。
いつまでも見ていたい。
そんな魅了される作品に出会える、美しい枝垂桜に見守られた彼女の記念館 白凛居。
続いて、日本画の巨匠 木村武山が生家に建立した大日堂へ。
病気で右手の自由を失う武山。
それでも日本画への情熱を失わず、左手で描きはじめた。
“左武山”渾身の見事な仏教世界が、その内部に静かに佇む。
その繊細さと描かれし世界の広さに息を飲んだ。
そこから、親鸞聖人ゆかりの西念寺へ。
都を追放され、越後を経て20年近くこの地に住んだ親鸞。
そう。ここは浄土真宗を生み出した地でもある。
彼はここで何を思ったのか。遺骨の一部が納められた六角堂は必見。
旅の最後は、笠間の福原へ。
見事な蓄音機の調べに旅の疲れを癒す。
本物を知る贅沢に、みな酔いしれた。
こだわりを持つ蓄音機の所有者 萩原さんが、素直にかっこいい。
偉人たちの祈りをなぞる、優しい旅。
文・画像 磯前賢次氏